とんでも腐敵☆パートナー
 でもそろそろ祥子の手が飛ぶかな、と思った時、再び高地さんは笑みを消し、少し真面目な顔になった。
 
「ねぇ、祥子ちゃん」
 
「………………」
 
「俺、こうして祥子ちゃんといるの、すごく楽しいんだ」
 
 祥子の怒りの表情が消える。代わりに表れたのは、微かな戸惑い。
 
「だからさ、たまに、こうして一緒に映画見て笑ったり、公園を散歩したり、で、デートとまでは言わないまでも、俺と、その……」
 
 鼻の頭をぽりぽりと掻きつつ。赤らんだ顔で高地さんは言葉を続けた。
 
 夕陽が二人を照りつける。
 
「お、俺と……な、なんてゆーかその、えっーと……」
 
 だぁーっ! じれったい! 男ならがつーんといかんかいっ!
 
「だ、ダメだ。いざとなると言葉が……えーと、そ、そう、アレだっ!」
 
 やっと言うべきセリフに思い当たったのか、高地さんは意を決したように顔を上げ、祥子を真っ直ぐに見つめた。
 
 祥子はもうはぐらかしたりせず、いつもの無表情に僅かな驚きを加えて高地さんを見返す。
 
 太陽が、一際眩しく輝いた。
 
 そして、逆光が二人の姿を影へと変えた時、ぎゅっと拳を握った高地さんの震える声が、大きな叫びとなって辺りに木霊した。
 
 
「お、俺と……俺と、明るく幸せな家庭を築いてくださいっ!!」
 
 
 気が早すぎだ――――――っ!!
 
 
< 183 / 285 >

この作品をシェア

pagetop