とんでも腐敵☆パートナー
「ああっ! しまった! 飛ばしすぎたっ! ち、違うんだ祥子ちゃんっ。俺はちゃんと段階踏んだお付き合いを望んで……」
 
 
「アホか――――いっ!!」
 
 
 次の瞬間。
 
 野球選手さながらの綺麗なフォームで祥子が放ったバッグは、ほぼ直線の軌道を描き、ばし――んっといい音を響かせながらアホの顔面にクリーンヒットした。
 
 ジャストミートッ!
 
「がはっ。しょ、しょおこ、ちゃん……」
 
「話にならんわっ! グリコッ!」
 
 きっと真っ直ぐこっちを振り向いて怒鳴る。
 
 え。
 
 今、アタシのナマエが、ヨバレマシタカ?
 
 カキーンと石のように固まるあたし。
 
 聞き間違い? 聞き間違いですよね、きっと。
 
 は、はは、ははははは。
 
 だがもちろん聞き間違いなどではなかったようで。
 
「そこにいるんでしょっ! 帰るよっ!」
 
 憤怒の表情はメデューサの如く。
 
 その瞳は一点違わずあたし達が隠れてる岩山を見据える。
 
 
 おーまいがっ。
 
 
 同じく石化していた拝島さんが、「く、栗子ちゃん……」と小さく震える声であたしを呼んだ。
 
 や、やっぱ、出て行かなきゃダメですかね?
 
 泣きそうな顔で拝島さんの目を見ると、気の毒そうな視線と首肯が返ってきて、あたしは一気に奈落に突き落とされた気分になった。
 
 のおおぉぉぉぉぉっ!
 
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