とんでも腐敵☆パートナー
 濡れた唇。
 
 貪るように、吸い付いてくる。
 
 呼吸が乱れる。
 
 空気を求めて開いた口に侵入してくる温かいもの。胸に押し付けられる体温。
 
 首の後ろに回された腕は意外と強固だ。これほど情熱的な章は見たことがなかった。それほど切羽詰ってるということか。
 
 だがしかし――――
 
 縋りつく必死さで絡められてくる舌は、少しの快感も呼び起こしはしなかった。
 
「どうしても別れるって言うなら……お願い。最後に抱いてください……」
 
 やっと離れた口から囁きかけてくる言葉。こんな言葉まで言わせる程、俺は章を傷付けてきたのだ。
 
 合わせた体から伝わってくる肩の震え。
 
 俺の目を覗き込んでくる潤んだ茶色の瞳。
 
「お願い、冬也……」
 
 受け入れてやることができたなら、どんなにか良かっただろう。
 
 だが――――
 
「それはできない」
 
 俺の心はもう拒んでいる。
 
 数年前ならあっさりと抱けただろう。心と体がひとつではなかった数年前なら。
 
 だが今はもう――――心と体が欲している人間は一人しかいない。
 
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