とんでも腐敵☆パートナー
 今日はよくよく邪魔される日だ。
 
 もう夕食は宅配で済まそうかという気分になりつつ受話器を取る。
 
「はい、朽木です」
 
 素っ気無い口調で言った。
 
『あ! もしもし朽木さん!? あのねっ、今テレビでイケメンレースやっててねっ、すんごい朽木さん好みのイケメンが』
 
 ガチャン
 
 今一番聞きたくない声だった。即座に今の音声を記憶から抹消しにかかる。
 
 
 イケメンレースってなんだイケメンレースって。
 さっきまでの重苦しい雰囲気を返せ。
 
 
 どっと疲れて肩を落とす。
 
 再び電話の音が静寂を破り、俺のテンションは怒りゲージMAXにまで引き上げられた。
 
「グリコッ! お前いい加減にせんと、しまいにはミンチにするぞっ!」
 
 受話器を取るなり怒鳴りつける。
 
 数秒後に、恐る恐るといった声が応えた。
 
 
『と、冬也……?』
 
 
 その声に思わず固まってしまう。
 
 母の声だった。
 
 
 
< 197 / 285 >

この作品をシェア

pagetop