とんでも腐敵☆パートナー
「じゃあ行くよ」
 
 ブルルルル……
 
 拝島さんがエンジンをスタートさせ、車体が小さく震え出す。
 
 男の人が運転する姿って、何気にカッコイイ。素直に見惚れる。
 
 それから車が動き出すと、
 
「きゃあ~~っ! 動いた動いたぁ~~っ! 凄いっ! お父さん以外の人の運転って初めて!」
 
 あたしは興奮して甲高い声で騒ぎまくった。
 
「煩いぞグリコ! 拝島が運転に集中できないだろう!」
 
「いいよいいよ朽木。俺の運転で喜んでもらえて俺も嬉しい」
 
 うはっ。拝島さんてめっちゃいい人だ。
 
 妄想のネタにするのが申し訳ないくらい。
 
 しばらくあたしは興奮を抑え込んで良い子に座っていた。
 
 外の景色が流れるのに目を向ける。
 
 車に乗ったのは初めてじゃないのに、なんだか新鮮な気分なのは何故だろう。
 
 やがて長いレンガ造りの塀が見えてきて。
 
「あ、ここ、俺達の大学だよ」
 
 拝島さんがナイス発言をしてくれた。
 
「はっ、拝島っ!」
 
 朽木さんが顔色を変える。
 
「へぇぇ~~~~……ここがそうですかぁ~なるほどぉ~~~……」
 
 にやりと笑うあたし。
 
 目はしっかり窓の外に固定され、通り過ぎる門に刻まれた文字を見逃しはしなかった。
 
「もう就職活動ってされてるんですか?」
 
 これはカマかけの質問だ。
 
「いや、薬学部は六年制だから。俺達は四年生だけど就職活動はないんだよ」
 
「ほぉぉ~~~~薬学部の四年生……なるほどなるほどです」
 
 殊更うんうん頷いて反芻してみせる。
 
 朽木さんがあたしを振り向いてギロリと睨みつけてくるのに対して、にんまりと笑顔を返した。
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