とんでも腐敵☆パートナー
 あたしの側頭部に食らわせたパンチを引っ込めて、朽木さんは不機嫌そうに足を速める。
 
「うそうそ待ってー。 ビストロ・朽木で是非お食事させていただきたいですっ!」
 
 慌てて追いかける。
 
「ふんっ」
 
 どんどん足を速める朽木さん。みるみる距離が開いてく。ちょっと失言したくらいで心が狭くない?
 
 仕方ない。あたしは自転車に跨り、ペダルを漕いだ。
 
「ぅりゃぁ――っ!」
 
 どかっ!
 
 おしっ! 背中に見事なタイヤの跡!
 
「なにすんだこの腐女子がっ!」
 
 ぎゃひんっ。自転車ごと蹴り倒される。顎をしたたか地面に打ちつけちった。
 
「お、大人げないよ、朽木さん」
 
「お前にだけは言われたくないっ!」
 
 あうう。相変わらず手加減ないよこの人。
 
 自転車の下敷きになったまま頭上の朽木さんを見上げる。手を貸してくれる様子はない。
 
 憮然とした顔であたしが起き上がるのを待ってる。つれないお人。
 
 ぷふっ。紛れもなく朽木さんだ。
 
「あたし、チャーハン食べたい」
 
 なんか楽しくなってきて、地面に突っ伏したまま、にかっと笑って言った。
 
 朽木さんは一瞬きょとんとした顔になった後で、
 
「残したら殺すぞ」
 
 不敵な笑みで答えたのだった。
 
 
 
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