とんでも腐敵☆パートナー
 あんな状態の彼を放置しててもいいものか。
 
 拝島さんの前で朽木さんと彼が修羅場を演じたら、朽木さんがゲイだってバレちゃうだろう。それは困る。拝島さんと朽木さんの仲が危うくなる。
 
 ましてや今日は拝島さん一人。ドラマでもよくあるじゃない? 愛人が正妻に会いに行って、「私、あの人との子供ができたのよ。彼と新しい家庭を築くんだから、あなたは別れて!」なんて宣戦布告するシーン。
 
 あの彼から漂う雰囲気はまさにそんな感じ。
 
 なんとか彼が拝島さんに接触を図る前に捕獲しておかなきゃ。
 
 
 とか考えてると、食事の終わった拝島さんがトレイを持って席を立ち上がった。
 
「じゃ、俺、一旦大学に戻るから。また来るね、栗子ちゃん」
 
 拝島さんは手を振りながらそう言って店の扉をくぐっていく。
 
 拝島さんが店の外に出て行くと、ほとんど間を置かず愛人くんが立ち上がる。カップをゴミ箱に捨て、店を出てごく自然に拝島さんの歩いて行った方角に向かう。
 
 やっぱり。タイミングは合わせたようにピッタリだ。
 
 どうしよう。今はバイト中だけど――このまま放ってはおけない!
 
 
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