とんでも腐敵☆パートナー
「あたし、桑名栗子。みんなにはグリコって呼ばれてる。アナタの名前は?」
  
 彼は少し躊躇いがちに、ゆっくり言葉を吐き出した。
  
「……沢渡章」
  
 ほーほー。アキラくんか。これまたBLが似合うお名前で。
  
「章くんは、朽木さん……神薙先輩と付き合ってるんでしょ?」
  
 訊くと、章くんは苦しそうに顔を歪めて俯く。
  
「前はね。……今はもう……」
  
「別れたの?」
  
「飽きた、って、言われたよ」
  
 どひゃぁぁぁ~~~~っ!
 
 なんて鬼畜な台詞を言うんだ朽木さん! 
  
 いや、すんごく『らしい』けど。
  
「そっか。それで拝島さんを?」
  
「ごめん……僕、どうかしてたんだ。あの人が先輩を僕から奪ったんだ、って、思ったら……頭が真っ白になって……」
  
「いやいやそれは仕方ないわよ。そんだけ朽木さんを好きってことなんでしょ? 理性が吹っ飛んじゃったんだよね?」
  
 ぽろっ
  
 不意に彼の目に涙が溢れた。
 
「これでもう……完全に、先輩に嫌われた……」
 
 うひゃっ。あたしが泣かせたみたいじゃん!
 
「そそ、そんなことはないって! あたし、まだ章くんのこと朽木さんに話してないし! それにホラ、どう考えても悪いのはあの冷徹男の方でしょ!?」
 
 なんか焦っちゃって早口になるあたし。なんであたしが慰め役やってんだ? 恐るべしカワイコちゃんオーラ!
 
「冷徹……? 先輩はとっても僕に優しかったよ。あんなに優しくしてもらったのに僕は……」
 
 冷徹なのはあたしにだけかいっ。
 
 ちょっと不愉快だぞ朽木さん。
  
 頭の中で朽木さんにキックを食らわせる。
 
 まぁそれはともかく。こんな未練たらたらな彼は放っておいたらまた拝島さんをストーキングしそうだし。
 
 あたしにできること、してみるか。
 
 章くんの手を取り、言ってみる。
 
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