とんでも腐敵☆パートナー

7-5. ネコ派?イヌ派?いいえ私はオオサンショウウオ派

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 最近見つけたお気に入りの喫茶店。
 
 マホガニーのアンティークなテーブルと椅子が並ぶ店内はちょっと古風な隠れ家風。
 
 卵色の壁にはこれがここの特色なんだけど、所狭しと猫の写真が飾ってある。
 
 各テーブルの上にも小さな陶器製の猫の置物が飾ってあり、マスターの猫好きが窺える。
 
 茶器にまで猫のワンポイントが入ってる徹底ぶりは天晴れの一言に尽きるこの店、その名も『猫屋敷』にて、紅茶を飲みながら章くんの話に耳を傾けた。
 
 
「神薙先輩は、中学時代のひとつ上の先輩だったんだ」
 
 章くんはティーカップの中に目を落としながらポツポツと話し始めた。
 
「僕が入学した時にはもうかなりの有名人で……一目見て納得したよ。険のある鋭い瞳、誰も寄せ付けようとしない刺々しい雰囲気――。でも、目を惹きつけられずにはいられないオーラがあって、誰よりも圧倒的な存在感を放ってたんだ」
 
 へーそうなんだ。今の朽木さんにはそこまで刺々しい雰囲気はない。人を寄せ付けない壁は作ってるけど、それは巧妙に笑顔で隠してる。
 
「小学時代は神童とも呼ばれてたらしいよ。常に成績はトップ。スポーツも万能で、先輩にできないことなんてひとつもなかった」
 
 ちりりんと涼やかな鈴の音が響く。新たな来客の知らせ。
 
「加えて神薙グループの跡継ぎって噂されてたからね。誰でも先輩に憧れた。少しでもお近づきになりたいと思った。僕もその中の一人だよ」
 
「神薙グループ? あの旧財閥ですんごい大企業の!?」
 
「そう。輝かしい将来が約束された人だったんだ。余りある才能がそれを証明してた。あの頃の先輩は僕なんて全然手の届かない人だったんだよ」
 
 あんぐり開いた口がしばらく塞がらなかった。
 
 朽木さんが神薙グループの跡継ぎ……そこまですごい人だとは思わなかった。
 
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