とんでも腐敵☆パートナー
「僕は後悔なんてしない! 先輩が誰を好きだって構わない! 僕の先輩に対する想いは、そんなことで揺らぐほど弱くないんです! 先輩は――先輩はそれを全然分かってないっ!!」
 
 章くんが声を荒げて頭を振るのに合わせて、光るものが辺りに飛び散る。あたしは声を失って、ただ見守ることしかできなかった。
 
「僕がどれだけ先輩に救われたか! 先輩の傍にいることが、どれほど僕にとって大切だったか! 中学の時からずっと……ずっと憧れてて……やっと近くに来れたのにっ! もう嫌なんです! 先輩と離れるのは、もう嫌なんです!」
 
 止め処なく溢れる涙を拭うこともせず。章くんは喉を振り絞る。
 
 ぶつけられる想いに触発されてか、徐々に、朽木さんの表情にも変化が現れた。冷たい顔の仮面が剥がれ、苦しげに眉根を寄せ、章くんを見つめ返す。
 
「どうしてそこまで俺を追いかけるんだ章」
 
「それは先輩が……」
 
「俺は言ったはずだ。もっと自分自身を見つめろと。お前はお前の道を見つけろと」
 
「――っ。僕は自分の能力を理解したうえでちゃんと資格を取ろうと……」
 
「いつまで親に縛られてるんだっ!? お前を見てると苛々するんだよ!」
 
 
「っ!」
 
 
 苦々しげに吐き捨てる朽木さんの声は、章くんに負けじと大きくなっていった。
 
「何故学力が上がらない!? 何故勉強に身が入らない!? お前自身が疑問を持ってるからだろう! この道が本当に自分に合ってるのか、迷いがあるからだろう!」
 
「それは――」
 
 そうだ章くん。
 
 本当にやりたいことをやってる人は、例え自分の能力が低くてもそんなに苦しい顔はしない。
 
 章くんは自分の気持ちが分かっていない。
 
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