とんでも腐敵☆パートナー
「もういい。章。喋るな」
 
「僕……自分が、嫌で……先輩にも、見捨てられて……生きてる価値なんて、ないと思ったんだ……」
 
 何故、俺は気付かなかったのか。
 
 章がここまで俺に執着する訳に、どうして気付いてやれなかったのか。
 
 章は家族のことを語るとき、いつも寂しそうな顔をしていた。もう自分の居場所はないんだと、小さく呟いていた。
 
 章が俺に依存すればする程、いつか来る破局が完膚なきまで章を壊しそうで怖かった。どんどん自分を押し込め、無理に笑う章を見ていられなかった。
 
 俺は章の支えになってやることはできない。
 
 神薙から隠れるように生きてる俺が、章に何を言えるというんだ?
 
 俺自身、拝島に支えられて生きているというのに――
 
 だから、俺が傍にいない方が――他の誰かが章の支えになってくれればと思い。
 
 傷の浅いうちに離れようと思ったのに――
 
 
 章の心はずっと、ぎりぎりのところを保っていたのだ。
 
 
 
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