とんでも腐敵☆パートナー

7-8. 旅館のスリッパを持ち帰るおばさんって本当にいるんでしょうか

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 いい音が響き渡った。
 
 突き抜けるような爽快音。突っ込み役の思い切りの良さが表れている。
  
 こんな状況でなければ、小気味良い、と形容してもいい音だろう。
 
 俺の腕の中で、章が泣き震えている、こんな状況でなければ――
 
 
 ――そう。どう考えても今はそんな音が響いてよい場面ではない。
 
 
 
「なんてことするんだお前はっ!」
 
 俺は意味不明な威勢の良さでスリッパを握るグリコを殴ってやりたい衝動に駆られた。だが残念ながら腕の中には章がいる。
 
 身動きが取れずに怒鳴りつけてやった次の瞬間。信じられないことが起こった。

「うっさい! アンタはもっとたわけよこの勘違い野郎っ!」
 
 スパァ――ンッ!
 
 
 なっ。
 
 
 今、俺がスリッパで。
 
 スリッパで叩かれたっ!?
 
 
 
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