とんでも腐敵☆パートナー
「それにしてもこんな広い部屋、一人で借りてるなんて贅沢ですねぇ。相当仕送り貰ってるんですか朽木さん」
 
「仕送りはもらってない」
 
「えっ。バイト代だけで払えるもんなんですかここ?」
 
「朽木は自分の稼ぎで払ってるんだよ。ネットで株とかやってるんだ」
 
 拝島が代わりに説明してくれる。俺はティーカップを手に取り、沈んだ心に熱を注ぎ込むことに没頭した。
 
「なかなか嫌味な生活ですねー。さすがあたしの見込んだ人です」
 
 こいつに見込まれるくらいならぼろアパートの四畳半でよかった。
 
 人生、何が災いするか分かったものじゃない。
 
 ますます気分が落ち込みそうになったその時。どこから取り出したのか、突然グリコがデジタルカメラを俺に向けて構えた。
 
「あっ。憂い顔の朽木さんシャッターチャンス!」
 
 こ、こいつっ。こんなものまでっ。
 
 おちおち沈んでもいられない。
 
「勝手に撮るな!」
「安く払いますから!」
「ますます納得できるか!」
 
 グリコに飛び掛らん勢いで手を伸ばしたが、あっさりかわされる。
 
 再び俺とグリコの追いかけっこが始まった。
 
 俺はカメラを取り上げようと躍起になり、グリコはキッチンから寝室からちょこまかと移動して逃げる。ガキ大将かこいつは。
 
「あははははは! やっぱグリコちゃんがいると朽木の崩れっぷりが面白いなぁ」
 
 くそっ。今頃は拝島と二人でお茶して、もしかするといい雰囲気になってたかもしれないのに……。
 
 洗面台の前でようやくグリコの腕を捕まえた。そのままリビングに引っ張って連れ戻す。
 
 やはり、まずはこの女の始末からつけないといけないようだ。
 
< 38 / 285 >

この作品をシェア

pagetop