とんでも腐敵☆パートナー
「お前な……これ以上俺と拝島の仲を邪魔するのなら、俺にも考えがあるぞ」
 
 言いながらそっと後ろ手にドアを閉め、ガチャリと鍵をかけた。
 
 さぁて、どうしてくれようかこの女。
 
 しつけの悪い猫は、たっぷり教育してやらねばなるまい。
 
「む。鬼畜モードのスイッチオン?」
 
 ようやく危機的状況を理解したグリコが振り返って俺と対峙した。
 
「ああ、お仕置きタイムの始まりだとも」
 
「拝島さんにチクるって言っても…………ダメ、っぽいね」
 
 その通りだ。
 
「お前の口を黙らせる方法などいくらでもある。例えば……そうだな。恥ずかしい写真を撮ってネットでばらまく、ってのがオーソドックスか? お前の好みだろう?」
 
 扉を塞ぐ形で立ち、挑発的な薄い笑みを浮かべる。
 
 獲物を捕らえるのに焦る必要はない。
 じわじわと追い詰めていくのが俺の好みだ。
 
 じっと舐めるように見つめると、初めて、グリコの顔に緊張の色が走った。
 
 大きな黒い瞳も、よく回る口も、いつもの楽しげな表情を失っていく。
 
 密室。
 
 ここは7階。幅の広い出窓の外は足場になる物などない。
 
 部屋は10畳の広さを誇るが、本棚や作業机でスペースを占められたこの部屋で人一人を捕まえるなど、唯一の出口である扉を塞いでしまえば造作もないことだ。
 
 そして、その唯一の退路は俺によって塞がれている。
 
 俺と密室で二人きりになるとどうなるか、全く予想してなかったのかこいつ。
 
 そんな見通しの甘いことでは俺の相手にはならない。
 
 俺は扉を背にしたまま、すっと足を前に進めた。

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