とんでも腐敵☆パートナー
「桑名さん、今夜空いてる?」
 
 彼女は開口一番そう言った。
 
「空いてるけどどうしたの?」
 
「今日、合コンするんだけど、女の子が一人欠けちゃったのよ。頼んでた子が風邪ひいて」
 
「ふぅん、それであたしが代理?」
 
「そう、代わりにお願い! 桑名さん!」
 
 相田さん(多分)は両手を合わせて懇願してきた。
 
「真昼か祥子のが適役じゃない?」
 
 あたしは興味なさげに返す。
 
「あの二人だと全部持ってかれちゃうじゃない」
 
 それはどういう意味なのか。
 
 突っ込みたいところだけど彼女とそれほど親しいわけじゃない。
 
 自分の失言に全く気付かない彼女はとにかく焦りまくっていた。こないだ車を止めようとパニクった自分を思い返して、あたしはなんとなくOKの返事を返した。
 
 幹事役も楽じゃないんだろう。
 
「ありがとう桑名さん!」 
 
 晴れやかな笑顔になって喜ぶ相田さん。
 
 本当は合コンとか苦手なんだけど、適当に座ってるだけでもいいだろう。所詮人数合わせだもんね。
 
「じゃあ18時に駅で待ち合わせってことで。ホントにありがとう! よろしくね、桑名さん」
 
 何度もありがとうを繰り返しながら、相田さんは席を離れていった。
 
「うん、じゃあまたね相田さん」
 
 感謝されるのは悪い気分じゃない。あたしも軽く手を振って笑顔で返すと、相田さんはちょっと面食らった顔になって言った。
 
「あの……あたし、寺尾なんだけど」
 
 
 訂正。相田さんは寺尾さんだった。
 
 
 
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