とんでも腐敵☆パートナー
 拝島さんじゃない。
 
 友達? ううん、あれはただの友達じゃない。
 
 朽木さんに、はにかんだ顔で話しかける青年。
 
 拝島さん程じゃないけどなかなかのイケメン。朽木さんの好みっぽいと直感する。
 
 彼を見る朽木さんの顔は甘い魅惑的な顔で、彼との関係がただならぬものであることを物語っている。
 
 実はこないだ朽木さんちに行った時、洗面台に歯ブラシが数本並んでるのを目にしたのだ。
 
 ニ本なら「同棲?」と怪しむところだが、五、六本あり、単に多めに置いてるだけ、と一見思わせられる。でも、だからこそあたしは「アヤシイ」と感じていた。
 
 きっと、特定の誰か、もしくは、朽木さんちに泊まる行きずりの人用なんだろうと。
 
 で、朽木さんの隣にいる『彼』は、行きずりの男性なのかというと、今日出会った風には見えない。
 
 多分……「セ」のつくフレンドだ。
 
 朽木さんめぇ~~拝島さんという想い人がありながら。
 
 
 ちゃっかりつまみ食いしてるんじゃん!
 
 
 まぁしても悪くはないけど。
 
 などと考えつつ、あたしの脳はしっかりその男性の顔をインプットしてる。
 
 新たな妄想のおかず、いただきました。ごっつぁんです。
 
 
 あの人、元はノンケかな。朽木さん、どんな風にオトしたんだろ。
 
 あたしを脅してきた朽木さんの、獲物を狙う肉食獣のような目を思い出し、それを彼に向けてうふんあはんな展開になるのを想像して頭がピンク一色になりのぼせてきた頃。
 
「栗子ちゃん?」
 
 目の前の男の人が怪訝な顔で覗き込んでることに気付いた。
 
 あ、合コンの最中だったんだ。
 
 やばいやばい。夢の世界に旅立っちゃうところだった。
 
 あたしは慌てて笑顔を繕った。
 
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