とんでも腐敵☆パートナー
 はっ!
 それかぁぁぁっっ!!
 
 
 あたしがのぼせたのが、誘ってるように見えたのか!
 
 いやいやいやいや。
 
 違うんだ。これは違うんだよマイケル。
 
 淫らな妄想にふけってたからであって……ってますます誤解されるやん!
 
「可愛いね。このままキスしたら、どうなるのかな?」
 
 
 ぞわぞわぞわっっ
 
 
 寒いものが全身を駆け抜ける。
 
 猫だったらまさに全身逆毛状態。
 
 BL本の中で読むと甘くて鼻血もんなセリフも、自分が言われるとこんなにお寒いものなのか!
 
 栗子、またひとつ大人の階段昇っちゃった…………。
 
 
 あたしが声も出せないでいると、男は調子にのってますます顔を近付けてきた。
 
 もう、あと僅かで唇が触れそうになるほど、息遣いが伝わってくるほど――近い。
 
 
 この、寒冷前線スケコマシ男がぁぁぁ~~~!
 
 
 あたしはぎりっと奥歯を噛みしめると、
 
 
「こうなるんです!」
 
 
 一旦腰を落とし、かがむ姿勢になった後、一歩前に身を乗り出しながら、勢いよく立ち上がった。
 
 
 がつんっ!
 
 
 頭に衝撃が伝わるのと同時にええ感じの音が鳴り響く。
 
 あたしの渾身の頭突きは、男の顎に見事クリーンヒットしたようだ。
 
「ぃってぇぇ――――っ!」
 
 男は顔を両手で覆いながら悶え苦しみだした。
 
 ざまぁみろ。
 ではあるのだけど……。
 
 
 ごめん、寺尾さん。
 あちき、やっちまいました。
 
「もう酔いは醒めたみたいなんで、あたし、席に戻りますね」
 
 男が怒りに我を忘れて反撃してくる前に、あたしはそう言い置いて素早く店内に戻っていった。
 
 一度だけ笑顔を送り、それからもう二度と振り返ることなく。
 
 
 やっぱ合コンって苦手だわ。
 
 席に戻りながら、ペロリと舌を出した。
 
 
 
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