とんでも腐敵☆パートナー

3-2. お調子者は愛される

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 昼休み。
 
 拝島と二人肩を並べ、学食へ通じる学内の道を歩いていた。
 
 今日も天気は晴れだ。毎日同じような空が続いていたが、陽射しは確実に温度を増している。もうすぐ夏本番といったところか。
 
 頭上の濃い緑が落とす影は、照りつける太陽から僅かに熱を奪ってくれた。
 
 湿った風が吹き、蝉の声が一際高く鳴り響く。
 
 拝島が不意にこちらを振り向いて言った。
 
「栗子ちゃん…………また来てるね」
 
「言うな拝島」
 
 せっかく忘れようとしてたのに。
 
 
 両側が緑地帯となっているこの道。
 低木や高木が多数植えられ、公園の散歩道のような安らぎの空間が演出されているが。
 
 先ほどから、安らぎとは程遠い気配が木々の合間を縫いながら、俺達の後をつけていた。
 
 邪気にまみれたその気配の正体など、推測するまでもない。
 
 ここ数週間、毎日のようにその気配は俺と拝島につき纏っていた。
 
 二人で道を歩いてる時。
 食事をしてる時。
 ベンチにもたれて雑談してる時。
 図書館で本の山に囲まれてる時。
 
 僅かなチャンスも逃すまいとする、獲物を狙うハンターのような視線を始終感じていた。
 
 感じるだけなら無視のしようもあるのだが、こいつは天然なんだかわざとなんだか、隠れ場所からもろ見えなのが始末に負えない。
 
 はっきり言って目障りだった。
 
 
「そろそろ警察に通報するべきかもしれないな」
 
「え。あれ、栗子ちゃんだろ? それはさすがに可哀想だよ……」
 
「拝島、あれはストーカーという立派な犯罪行為だ。犯罪者に優しい顔する必要はない。増長するだけだ」
 
「またまたぁ。朽木は冗談きついんだから」
 
 俺は大真面目に言ってるんだが。
 
 そんな会話をしながら進み、学食の入り口が見えてきた頃。
 
 
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