とんでも腐敵☆パートナー
「課題のレポート、手伝ってほしーぃな♪」
 
 てへっ、と小首を傾げておねだりポーズで言ってみた。
 
 我ながらかなり寒い。男はこれでイチコロって以前真昼が言ってたけど本当に効くのかコレ。
 
 もちろん、朽木さんに効くとは思ってない。
 
「断る」
 
 いつもの即答。やっぱりそうだよね。
 
 あたしは大仰にため息をついて落胆の顔をしてみせた。
 
「朽木さんったらどうしてそんなにつれないの? あの人にはすっごく甘い顔してたくせに」 
 
 両の拳を目元に当て、しくしく泣きまねポーズ。
 
「誰のことだ?」
 
「茶髪猫っ毛のイケメンくん。こないだ一緒に歩いてたでしょ」
 
 拳の間から上目遣いに朽木さんを見上げる。
 ぎくっと朽木さんの顔が強張った。
 
「二人のキスシーン撮っちゃった♪ 拝島さんに見せちゃおっかな~♪」
 
 ポーズはそのままに、にやり笑いを付け足す。
 
 写真を撮ったなんてもちろん嘘だ。
 
 こないだ合コンの日に二人は並んで歩いてただけだった。でも、どこかでキスしただろうとカマをかけてみた。
 
「拝島に見せたら殺すぞ貴様」
 
 ビンゴ! やっぱり二人はキスしてた!
 
「レポート手伝ってくれたらデジカメのデータ消したげる。お願い! どうしても明後日までに仕上げなきゃなんないの!」
 
 騙すなんて卑怯な手口だけど、今回ばかりは手段を選んでいられない。
 
 それでもちょっと心が痛むので、あたしは正直に今の窮状を打ち明けたのだった。
 
 
 
 
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