目を閉じてトリップ
翌日も、その翌日も窓辺の贈り物は続いていた。ハルカは貰い続けることに不安を感じてきた。誰かの部屋と間違えているのではないか、後でお金を請求されるのではないか、と。
例えこのプレゼントがハルカ宛てであり、謝礼を目的としたものでなくても、知らない人から物を貰い続けるのは居心地が悪かった。
そこでハルカは申し訳ないと思いながらも、部屋から出てずっとドアの外で耳を済ますという作戦をとることにした。
ドアに耳をつけて中の様子を探る。すると思ったよりもすぐ窓が開く音がした。ハルカは素早くドアを開けた。
「あ……!」
目を丸くした少年と目が合う。彼は窓の隙間から手を突っ込んでお菓子の袋を入れるところだった。
ハルカと目が合った途端、少年は逃げ出した。ハルカは窓から身を乗り出し、路地を走って行く後ろ姿に向けて声をかける。
「待って!」
そう大声で言うと少年はぴたりと動きを止め、気まずそうな顔で振り返った。
「ねえ、話しようよ」
なるべく穏やかな声でハルカが言うと少年は小走りで戻ってきた。
「そこのドアからうちに入って、ね?」
諦めた様子で少年はハルカに従った。