目を閉じてトリップ
「でさ、見たところなんの取り柄もなさそうなハルカちゃんはどうやってお金稼ぐわけ?」
ハルカの周りを歩きながらイタチは言った。高校の普通科に通っていたごく普通な高校生だったハルカに言い返す言葉はない。
「どうしたらいいのか、わからないです」
「そう言うと思った。優しーい俺が斡旋してやっから安心しな」
そう言うとイタチは自分の固そうな右の拳をハルカの鼻先に突き付けた。人差し指の根本に親指の爪ほどの大きさの紫色の宝石がついた指輪をはめている。
「ハルカちゃんのお仕事はこの指輪をつくる作業ね」
「つくる、って」
「ああ、この土台に接着剤で宝石をくっつけるだけだから。ちゃっちいつくりでしょ」
イタチは机の引き出しから青い宝石がついた指輪を一つ取り出した。
「ここでは指輪が身分を表してんのさ。王女がつけんのが透き通った宝石、あと身分が上の方から赤、黄、紫、青……」
指輪を見つめていたハルカははっとして顔を上げた。
「そう、あんたは最下層だよハルカちゃん」