君へ

10

「なお、疲れた?」
私にとあてがわれた広すぎる部屋にまた戻り、ローソファーに二人で座る。
もともと私物等殆どないので部屋にもベッドとソファーとまだ開けていないクローゼットだけ。
家具ひとつずつは大きいのに狭くみせないくらい広い部屋。
申し訳ない。
見るともなしにフローリングの磨かれた床を見つめる。
なんだか起きてから何時間も経った気がするけどまだ8時過ぎ。
6時頃に起きたから2時間たったくらいなのだ。
「疲れる、というか、びっくり…」
そう、驚いた。
まだ現実と飲み込めない自分がいる。
「うん。ゆっくりひとつずつ慣れていけばいいよ。もう、時間は沢山あるから」
うん、ありがとう。
「なおの部屋は此処ね。一番日当たりいいんだよ」
立ち上がると永久くんの身長より高い窓のカーテンをさっとひく。
眩しい日差しが目に飛び込む。
「気持ちいいでしょ」
俺の部屋は隣ね。
春と後もう一人の女の子も下の部屋に住むんだよ、と教えてくれる。
住人はそれだけ。
「明日はお休みだからなにか部屋に足りないモノ買いに行こうか」
何が欲しい?
と聞かれ戸惑う。
私の欲しいモノは目の前にある。
でも、手を伸ばしてはいけない。
私なんかが、触れてはいけない。
「私は、特に…永久くんは…?」
「ん~俺もまだあんまり揃ってないから色々買いたいから一緒に行く?」

…一緒?

買い物、ついていってもいいの?

嬉しい。

「い、いい、の?」
思わず、確認してしまう。
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