君へ

15

ふふ。
なおから零れた吐息にも似た笑い声。
小さな。
思わず俺達の会話も止まってしまう程の威力。
「っ…」
なおは箸を持っていない方の手で気付いたように口を押さえる。
会話を止めてしまったと勘違いしているのだろう。
「大体姫の歓迎パーチーだしぃ姫は肉派海鮮派?後はとうもろこし派ともういっそタコ焼き派とかあるけど?」
春はなおに構わず話し続ける。
既に焼き肉じゃないし。
「えと…」
真剣になおは悩んでる。
「タコ焼き…」
「!」
まさかここでこのチョイスか。
良いけど。
「タコ良いねぇ。姫、肉はぁ?」
まだいうか。
こくりとなおも頷く。
「んぢゃタコ&肉パーチーという事で」
まぁなおがいいなら俺はいいけど。
「永久そいえば焼き肉用のプレートはあった気がするけどタコ焼き器はあったっけ?」
俺も今記憶辿ってみたけど無いな。
「明日、なおと買い物行くからその時買うよ」
一個はあってもいいだろう。
「あ、ごめ」
「なおタコ焼きの作り方分かる?」
首を横に振られる。
「俺もないから明日頑張って作ろうね」
なおは一瞬思案しておずおずと頷いた。
「はい、決まりぃ。ぢゃあ姫頑張って残り食べてねぇ」
春が何故かまとめる。
なおは俺達の三分の一しか入ってない器に箸を置いたまま途中で止まっている。
確かにもう少し食べた方がいい。
「なおゆっくりでいいよ。明日は休みだし」
思い出したように、箸と手と口が機械的に動いて止まらない。
「なお、お茶のお代わりは?」
「姫他にもコーラとサイダーとファンタもあるよぉ」
炭酸好きの春が続く。
「なおは何が好き?」
選んでいいんだよ。
「さっきお茶飲んだからコーラにする?サイダー?」
なおは春のコップに入っている透明な泡を見詰めていたけど、お茶が欲しいですと応えた。
「炭酸はお腹いっぱいになりそうなので…」
なおにお茶をつぐともぐもぐとまた小さな口を動かし始めた。
でもTVや他の話題に盛り上がる俺達を見て声こそあげないけど表情を和らげて見詰めてゆっくり食事した。

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