君へ

29

あの後、喜びと自分への嫌悪とでぐちゃぐちゃな自分を必死に落ち着けた。
朝食を食べたら彼と買い物だ。
泣いてみっともなくも、彼が触れてくるのに対応できなくておどおどするのも出ないように押し殺した。
彼は昔のように手を繋いで歩こうという。
あの頃と今では私の中での気持ちが違う。
でも、彼があの頃をと願うなら私もこの意味のない気持ちも無かった事にして隣に居れる事を願う。
彼の横に居ると条件反射で精神が安定する。
手を繋いだり、一緒にソファーで昼寝したり、当たり前だった。
あの頃、彼は夜中々眠れない私の為にと一緒に昼寝してくれた。
あの時から私は彼の隣でないと眠れない。
手を繋いで、肌で、温もりを感じないと安心出来ない。
パブロフの犬。
私に似合いの例えだと思う。
彼が喜ぶなら足だろうが靴だろうが舐めて、傍に居てくれないといやだと吠える。
馬鹿な犬だ。
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