君へ

30

「美味しそうだね。なお熱いから気をつけてね」
頼んだ3品と飲み物を前にそれだけでお腹いっぱいという顔のなおに取り皿に分けて料理を渡す。
こくりと頷いてちょこちょことフォークとスプーンを使って食べている。
熱いのか唇を尖らせて懸命に息を吹き掛けている。
「美味しいねこれ」
隠し味は何かな。
家で作るなら用意する材料は何かな。
普通の会話を楽しむ。
なおは外で、しかも周りに他人が沢山というだけで必要以上に緊張しているので、柔らかくなるべく楽しくなる話題をする。
「タコ焼き器はどこに売ってるかな」
今日あのスーパーが肉の日なら良かったのに。
ごめんね。
なおの心の一番奥の気持ちに気が付かなくて。
表面上の、君がたまに小さく笑ってくれる事に浮かれて。
もっと話さなくてはいけない事。
もっと聞かなくてはいけない事に気が付けなかった。
なお、好きだよ。

もっと沢山伝えれば良かった。

でも、俺あの時幸せ過ぎて怖くて。

口に出して言葉にすると全部消えてしまうんじゃないかと本気で思って怖くなってた。

なおと言葉にしなくても心で繋がってれば壊れないと。

一番確かだと。


思ってたんだ。


…………ごめん。



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