キミに触れたくて。
私の学校は、南棟と北棟に別れていて
私の教室は、南棟の3階。
そして、美術室は北棟の3階にあった。
移動するのに、最も遠い場所である。
放課後、少し部活に遅れると部長に伝え、美術室へと向かった。
すると、またあの香りが。
甘い香りが、美術室へと続いている。
全て階段を登りきると、廊下全体が、その甘い香りに包まれていた。
私は恐る恐る、美術室のドアを開けた。
「失礼します。」
そこには、黒縁眼鏡のちょっと小太りな先生が座っていた。
「ん?見かけない顔だね。どうした?」
少し頼りない、優しい声だった。
「あのー…進路のことで、相談したいんですが、よろしいですか?」
先生はニコッと笑うと、私を教室の中へ入れてくれた。