キミに触れたくて。
進路希望提出日。
私が提出したものを見て、担任は
「やっぱり美大か…。後悔しないように頑張るんだぞ。」
そう言ってくれた。
きっと、担任の言葉がなければ、今の私はいないだろう。
それくらい、影響の強いものだった。
亮佑にも報告をした。
「私、美大に進むことにした。」
「そっか、頑張れよ!」
亮佑の何気ない応援が嬉しかった。
そして、この日がやってきた。
先生に言われた通り、鉛筆とスケッチブックを持って、美術室へ向かう。
すると、またあの香りが。
美術室の前には、眼鏡をかけた男が2人。
一人は、180cm以上もある長身。
もう一人は、真逆。
160cmくらいの小柄な人であった。
私はその2人の前を通り、美術に入った。
(もしかして…)
あの甘い香りの正体が、そこにいたのだ。
鋭い目でこちらを見ると、すぐに外方を向いてしまった。
「七瀬、よくきたね。こっちにおいで。」
先生がまた、ニコッと笑った。