キミに触れたくて。
#2 別
11月、私は毎日絵を描き続けた。
放課後が待ち遠しくて、仕方なかった。
私の他に美大志望の人間は、現時点で5名。
そのうち私と学年が同じ子は、1人しかいなかった。
中谷さん。
見た目はおとなしそうだが、毒舌。
そして奇抜な服装。
なかなか打ち解けない感じだった。
あとの3人は、男の先輩。
前に廊下で見た、眼鏡2人と甘い香りのする人。
私は絵を習った経験がなかったので、他の4人とは、全く別行動だった。
一人でスケッチブックとモチーフに向かって、黙々とデッサンをし続ける私。
先輩と言葉を交わすとしても
「さようなら…」
と、一言だけで話したりはしなかった。
ある日、亮佑にスケッチブックを見せた。
褒めてもらえると思っていたが、亮佑からは冷たい言葉が返ってきた。
「俺、絵とか興味ないし。」
私はそれから一度も絵を見せることはなかった。