赤と黄色と緑と【季節短編】
「あっお父さん!」
女の子は嬉しそうにベンチを立ち上がると声を弾ませながらにっこり笑った。
向こうから女の子が「お父さん」と呼んだ男の人が歩いてくる。
その人も嬉しそうに笑ってた。
「こんなところにいたのか、美緒。みんな探してたんだぞ」
その人が女の子の前に立った。
「うん、だってね、今日でお家に帰れるから最後にここに来たかったんだ」
「そうかじゃあもう帰ろう、今日はサンタさんが来てくれる日なんだから」
「うん!」
『一度帰宅?恐らく無理でしょう。お父さん、今は懸命に息子さんの命を長く保たせることだけを考えましょう』
――なんでこんな時に思い出すんだろう。