大嫌いでも大好きだから
それはまるで、
呪文のような囁き。

低くて重い彼の声は、
耳の奥まで響いていった。



「え…?」

わたしはゆっくりと、鳳くんを見上げた。

まだ彼の言っている意味が分からない。
頭が機能しない。



「俺、キミのこと好きになったみたいなんだ」

笑顔でそう言われ、
顔が赤くなる。

現在進行形で告白されているのだと、
虚ろな頭の中で理解した。



だけど、
初めて会ったばかりじゃない。


それに「紫音ちゃん」だなんて、
やけになれなれしい。



なす術もなくて、
わたしはまた下を向いた。
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