大嫌いでも大好きだから
お互い何も喋らない。
ただ時計の針だけが、切ないリズムを刻んでいる。
ふと、
鳳くんの溜め息が洩れた。
「突拍子すぎたかな」
彼は罰の悪そうな顔をした。
当たり前だよ。
と、言いたくなる。
「わたしのどこが…」
かろうじで言えた言葉は、それだけだった。
それでも鳳くんは、
相変わらずの爽やかな笑顔で、
「前から目をつけてたよ。紫音ちゃん可愛いもん」
と、そんな台詞を言うものだから、
逆らえなくて、彼が迫ってきても抵抗なんて出来なかった。
ビー玉のような瞳に捕われる。
鳳くんとの距離は10センチもない。
唇が触れてしまいそうで、一瞬わたしは目を閉じた。