リクエストを基にした・【Kiss】シリーズ 『純愛』・1
でも!

「まっ待ってください!」

わたしは立ち上がり、真っ直ぐに先生の目を見た。

「演奏なら、先生の前でもちゃんとできます! だから指導続けてください!」

「いや、でも…」

「大丈夫です! 今、弾いてみます!」

わたしはイスに座って、また鍵盤に触れる。

あっ…指が震える。

ダメだ! こんなんじゃ、先生がっ…!

ゆっくりと演奏をはじめる。

でも震える指から生まれるのは、とても醜い音。

こんな演奏…先生だって、いつまでも聞いていたくないだろうな。

わたしは演奏を止めた。
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