リクエストを基にした・【Kiss】シリーズ 『純愛』・1
「―好きだ」

「……へっ?」

自分でも驚くほどの、気の抜けた声が出た。

「好きなんだ、お前が。だけどオレじゃお前のピアノの才能を潰しかねないから、身を引くことにしたんだ。でもあくまでそれは、ピアノの指導者としての立場だけで…」

わたしは顔だけ振り返る。

先生の真っ赤な顔が、間近に迫る。

「男としては、引くつもりは一切無いからな」

―重なる唇。

先生のあたたかさが、全身に満ちていく。

「ふっ…」

思わず泣き出してしまったけれど、先生が顔中にキスの雨を降らせてくれる。

ぎゅうっと先生に抱きついた。

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