天使はワガママに決まってる

言った途端、涙が溢れそうになった。

莉奈が幸せになればいい。
私じゃなくて――莉奈と。


莉奈のために言った言葉なのに
まるで自分に言ったような気がした。
私だって、本気で彼のことが好きだったから。

二人が付き合うって聞いて、
いてもたってもいられなくなるくらい
胸が張り裂けそうだった。


あの夕焼けを、あの涙を
私は忘れたわけではない。


でも、私を愛してくれている裕唯の気持ちを
受けたのだから、
裏切れるわけない。
これでは――今の俊くんと同じだ。

だから、私は越える。
俊くんを好きって気持ちは、殺すんだ。
自分を越える。


「馬鹿だよ…二人とも…っ!」


――泣いちゃ駄目だ。

必死で堪える涙が、失恋したあの日とまた重なった。


これ以上話せば、
この気持ちが溢れ出てきてしまう。
もう、忘れるんだ。
今までの私たちに戻るために。

あの頃の、楽しかった三人に戻るために。


「莉奈のこと…考え直してあげて。」

「莉奈は、ほんとにいい子だから!!
 私が…保証するから…っ」


俊くんは、口を閉ざしてしまった。

――きっと、嫌いになったよね。
いいよ、それで。
嫌いになればいい。私のことなんて、大っ嫌いに。


「私、今の俊くん大っ嫌いよ。」


じゃあね、そう言い残して
私は保健室を出ていく。
引きとめる声も、腕もない。

廊下に出た途端、涙が溢れてきた。
嗚咽が中に聞こえないように
必死で口元を覆う。


「うっ…く、ひっ…、っ」


姿も、声も、
何もかも消えてしまいたい。

恋がこんなに苦しいのなら
そんな感情最初からなかったらよかった。

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