天使はワガママに決まってる
ギクシャクした足は、
本能で前へ前へと進む。
あんなに私たちを照らしていた夕日は、
もう既に沈んでしまった――
「羨ましかった…。」
「え、」
「あの二人のこと。」
頭を掻きながら、照れくさそうに
そう言った夜久くんは、
私の返事を待たずに言葉を続ける。
「俺、正直誰とも付き合ったこと…
ないんだよね。」
恥ずかしいんだけど、と言って
私に笑いかける彼を
私はただ凝視するばかり。
「だから、あんな幸せそうな姿見たら
いいなって思ったんだ。」
「わ……わっ、」
動け…っ!私の口……!
「私も……、」
「すっごく、羨ましかった……。」
それは本心だった。
この半年間、どんな想いで夜久くんを見てきたか。
練習試合に勝って喜ぶ彼を見て、
私も嬉しくなって
落ち込む彼にタオルの一つも渡しに行けない自分を
どれほど憎んだか。
マネージャーの女の子と
楽しげに話す姿を見ていると、
本当に胸が張り裂けそうだった――…
「え…」
そのとき
何かが、私の頬を伝った。
「日和……ちゃん?」
「あ、あれ…?何、で…」
突然、ポロポロと瞳から溢れた雫を
私は呆然と両手の指先で拭う。
夜久くんも驚いた様子で私を見つめていた。
「どうしたの?!」
「何でもないの…、何だか、私も
分からな…っ」
彼を困らせたくない。
その一心で、私は止まらない涙を拭い続ける。