天使はワガママに決まってる

出会って付き合って――後少しで1年。
喜ぶべきなのに、その事実はどんどん私の心を曇らせていた。
一緒にいる時間が増えるにつれ、
どうしても離れたくないという思いが強くなっていく。


そう、もう少しで
陽先輩は高校を卒業してしまうのだ。


「東京、行くんですね。」


私の問いかけに、先輩は黙り込んだ。

建築デザイナーを夢見て、
東京の有名な学校に行くことが決まっている先輩。
4年制で、しかも東京だなんてすぐに行けるような距離ではない。

夢を誰よりも応援しているはずなのに、
いざとなると寂しさが募って
彼を引きとめてしまいそうになる私が嫌だった。


「……寂しがってんじゃねぇよ。」
「う゛…」


こんな風に考えるたび、
陽先輩はいつだって私の気持ちに気づいていて
子供みたいに慰める。

別に困らせたいわけではない。
一生会えないわけでもない。
ただ…少しだけでも、別れる寂しさを感じてほしくて。


どんなときも先輩はクールで、何を考えているのか分からないから。
年下の私を本当に好きでいてくれているのかと不安になる時は、
何回だってあった。

……少しくらい寂しそうな素振り見せてくれたっていいのに。
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