天使はワガママに決まってる
少しだけ屈みこんで、
私と視線を合わせた陽先輩の顔は
マフラーと同じくらい赤くなっているのに
まるで勝ち誇ったような意地悪な笑みを浮かべていた。
「――で?」
くるりと向きを変えて、
また人々と同じように歩きだす彼を追う。
尋ねられた意味が分からずにぽかんとする私を
軽く振り向く先輩。
「俺の何が自覚ねぇんだよ。」
(どれだけモテてるかってことですよ!)
と、叫びたい衝動にかられるが
ドSな彼にそんなことを言ったら
後がどうなるかなんて目に見えてる。
陽先輩は、私なんかが彼女でいいんですかって
何度も思うほどに
たくさんの人に好かれている。
それが嫌なわけでもないけれど、
いいというわけでもなく。
3年生の先輩にも2年生にも、同級生にでさえ
嫌がらせはされてきた。
……その度に陽先輩が助けれくれたけれど。
今だってこうしてサディステックに笑う彼を
他のみんなは知らないんだ。
「ホラ、言ってみろ。」
自分でも分かっているくせに、
それをあえて私に言わせようとする。
そりゃ嫉妬はしてますよ!いつもいつも!
でも言ってしまうと、
やっぱり私ってまだまだ子供だななんて思ってしまうから
言いたくない。
「き…気づいてるくせに。」
「は?何が。」
「も~~!」
顔が火照る。
日も高いわけではないし、
まだ本格的な春というわけでもないのに。
いい加減、先輩の嬉しそうな顔に
我慢が効かなくなった私は、
躊躇いがちに口を開いた。
「よ…陽先輩は、モテるから…」
「から?」
どこまで言わせるんだこの人は!
「心配なんですっ!」