天使はワガママに決まってる
恥ずかしくて爆発しそう。
私はそこまで積極的でもないから、
いつもいつも陽先輩の傍にいるだけで
ドキドキして仕方がないのに。
「その…東京行って離れ離れになったら…」
「私まだまだ子供だから…」
そのとき、無言の彼は
スッとポケットから右手を引きぬいて
私の頭をポンポンと叩いた。
陽先輩を直視できないまま、
ただされるがままに私の髪の毛は乱れていく。
「髪、崩れます。」
「俺の気が変わっちまうかもーとか?」
「う゛……。そーですけど。」
どれだけ離れても、私が先輩を好きでいる自信は
有り余るほどにある。
でも、先輩はどうなんだろう。
好きで好きで仕方がない私の気持ちに
飽きたりなんてしてないだろうか――?
一緒にいても不安なのに、
遠く離れてしまったら、きっと耐えられそうにない。
だから、陽先輩の確かな言葉が欲しいんだ。
相変わらず私の頭を撫でたままの先輩は
ククッと喉を鳴らして笑っていた。
「んなわけねーだろ。」
馬鹿じゃね?
と言った先輩に、頭を叩かれて
思わず「痛っ」と声を上げる。
「俺、そんなに軽い男か?」
「軽かったくせに……」
「んな簡単に俺から告白なんてするかよ。」
それは確かにそうだ。
どんな綺麗な女の子に告白されても迫られても
いつだって「悪ィ」の一言で断ってくれた。
……こんな私の一体どこがそんなによかったのだろう。
「私のこと、本気?」
「本気に決まってんだろ。」
私が不安に思っていることも原因も、
多分全部分かってる先輩は
優しく微笑んでくれた。
それだけで私の心はフッと軽くなって
ようやく笑みが浮かぶ。
「……ところで、頭、撫でないでくださいってば!」
「あ?何でだよ。」
「子供扱いしないでください!」