天使はワガママに決まってる
「何か、買うんですか?」
「あァ…まぁな。」
そう曖昧に質問を濁して、店の奥へと進んでいく。
店内に人影は見当たらず、
店員さんと私たちだけだ。
店の一番突き当たりの角。
そこには小さな箱があり、
キラキラと輝くシルバーのリングが並んでいた。
「リングだ…。」
入口付近にあった激しいデザインのようなものではなく、
シンプルで、太さや形やラインだけが
少し違う指輪たち。
何だか…ここだけ特別な空間みたいだ。
「好きなの、選べ。」
「えぇ?!」
思わず叫び声をあげた私を、
文句あんのかと顰めた顔の陽先輩が睨む。
何故?今?急に?
といった疑問は多数浮かんできたが、
有無を言わさぬ先輩の視線から逃れるように
視線の先で光るリングを見つめた。
「あ…私、これ好き…。」
「それか。」
ふと目に留まったのは、丸みのある形に
一筋、波打つラインが刻まれたリングだった。
細身で、私なんかよりも陽先輩の方が似合いそう。
手のひらに乗せて眺めていると、
それを横からひょい、と先輩にとられてしまった。
しばらく無言で見つめてから先輩は私の方を向いて、
「いいんじゃねぇ?」
と一言。