天使はワガママに決まってる
「だい…じょうぶ?」
ようやく涙も落ち着いてきたころ、
夜久くんは再度私にそう尋ね、
優しく私の頭を撫でてくれた。
「えっ、」
その行動に驚いた私は
ビクッと肩を揺らしてしまう。
怖かったわけではなくて、ただ驚いただけ。
でも夜久くんは、ごめん、と
急いで呟いて、すぐに手を引っ込めてしまった。
――私こそ、ごめんね。
言いたいけど言えない自分に腹が立ち、
また私の瞳に涙が浮かぶ。
いつまでも涙が止まらないのに
それでも彼は、私が泣き止むまで
ずっと私の傍にいてくれた――
「もう、だいじょうぶ……。
ほんと、ごめんね。」
それからすぐに、無理やりにでも涙を止めた私は
必死に夜久くんに笑いかける。
すると夜久くんも安心したように、
笑い返してくれた。
「よかった。びっくりした。」
「ご、ごめん。」
「いいよ。」
そのまま、会話が途絶えてしまった。
気まずい雰囲気が、口を開くことを許さない。
(私の――馬鹿…。)
嫌われることが怖くて、
今までの関係を壊すことが怖くて、
どうしても声をかけることが出来なかった
今までの私。
見ているだけで幸せなのだから、
わざわざ壊すことも無いと思って
ずっとこのままでいいとさえ思っていた。
なのに。
まさか自分から壊してしまうなんて……
そう思っていたのに
「あの…っ!」
感情というものは本当に恐ろしい。
突然私は、無意識に何も考えず、
夜久くんを見上げて叫んでいた。
言ってしまった言葉は、もう飲み込めない。
しかし夜久くんは、鬱陶しがるでもなく
ちゃんと私を見つめてくれていた。
どうせ壊れてしまうなら、
言いたいことを言って、終わりにしよう――