天使はワガママに決まってる
「はろーん。杏(アン)ちゃん元気ー……って、
そうでもないか。ごめん。」
「由菜……。」
突然現れた少女、由菜(ユナ)は
申し訳なさそうに笑って、寝そべる私の隣に座った。
風が、彼女の綺麗に巻かれた髪をさらっていく。
「なにー?担任にボコられたの?」
「アハハ…まっさかーぁ。…まぁ、
精神的にアッパー食らった気分だけどね。」
私がそう言うと、彼女はあはは、と高らかに笑った。
モデル顔負けの容姿を持つのに、
由菜は保育園の先生をめざしているらしい。
私はごくりと生唾を飲み込んで、小さく口を開く。
「ね、由菜はさ、何て言われたの?」
「へ?あたしー?」
「うん。」
人差し指を口元に当てて、うーんと呟いた後
由菜は川の方を見つめながら言った。
「やっぱり、厳しいって言われたよ。」
「……そか。」
「うん。顔だけでなれる職業じゃないーってさ!」
「えー…?何それ。酷っ」
また由菜は笑った。
辛くないのかと思ったが、何も口には出さなかった。
彼女との付き合いは長いから、
内心は辛い思いをしたのも分かる。
由菜もさっきの私と同じように、足元に生えていた
小さな花をむしった。