天使はワガママに決まってる
その花びらを一枚一枚ちぎりながら
由菜は言う。
「ほんとさ、馬鹿みたいに思っちゃったよ。」
何が?と続けようとしたが、
それは由菜の次の言葉に遮られてしまった。
「現実ってさ、知らないじゃん。
18才なんだからーなんて言われたけど、
まだまだ子供なんだよ。」
「……うん。」
都合がいいかもしれない。
18才という年齢は大人だと反抗したのに、
こんな状況になれば、
まだ分からない、知らないと子供に戻ってしまうなんて。
でも、だから私たちはまだ子供なんだ。
「高校に入ったのだってさ?中学の先生は言ったじゃん。
”やりたいことを見つけるために高校に行けー”って。」
「うん。」
「ほんとは高校なんて面倒くさくて行く気なんてないのに、
周りが行くからあたしらも行ったんだよ。」
夢を見つけるために。
子供のころに抱いた夢を、現実にするために。
なのに、教師や両親、大人たちは
“現実を見ろ”と騒ぐ。
私たちを見えない何かで縛っていく。
明らかに矛盾している。おかしい。
でも、それを叫ぶだけの勇気は、私たちにはない。
「おかしいよね。ほんと。馬鹿みたい。」
そう言った由菜の横顔があまりにも切なくて
私は思わず目をそらしてしまう。