天使はワガママに決まってる
やっぱり由菜も、夢を諦める選択を
迫られたんだということが分かった。
「私たちが今までいた”現実”は、
夢だったのかなぁ……」
ふとそんな言葉が私の口から零れ出た。
由菜の視線を感じて、私も彼女の方を見上げる。
「私たちが辿りついたのは、どこだったんだろうね。」
由菜は変わらない瞳で、私を見た。
寂しそうに微笑む彼女の表情は、あまりにも美しかった。
私はむっくりと起き上がって、草むらに足を広げて座る。
「空にさ、嫉妬しちゃったよ。」
「はぁー?空に?」
何やってんのよ、と笑う由菜を顔を見て
思わず手にしていたカメラのシャッターを押した。
由菜は一瞬呆然としたが、盗撮だよと言ってまた笑った。
「別にやましい心がないから盗撮とは言いませんー。」
「あーハイハイ。そーですかぁー。」
今度は二人合わせて空に大笑いした。
さっきの残りの涙が、私の頬を伝う。
見れば、由菜も泣いていた。
「何泣いてんのー由菜。」
「うるさい、杏だって。」
その涙の理由は分からないが、
きっと同じような理由だろうと思う。
現実を見た、子供の涙。
自分の道を見てしまった、未来の涙。
でもいつしか、さっきまであんなに憎かった
小鳥のさえずりは聞こえなくなっていた。