天使はワガママに決まってる
それでも自分の考えに反して、
答えを求めるように見つめ続ける瞳。
夜久くんはただポカン、と口をあけて
私の言葉を聞いてくれた。
私たちの間に、妙な沈黙がおりる。
ねぇ――、冗談かと思った?
困らせてばかりでごめんね、夜久くん。
まるでストーカーみたいに
あなたの姿を見てたの。
タオルさえ渡せなかったけれど、
それももう今日で終わりだから――
「え、……と、
それ…本当に…?」
ようやく口を開いた夜久くんは、
また照れくさそうに頭を掻く。
視線は逸らしたままで、私の方は見ずに
ただあちらこちらと動くばかり。
「うん。ほんと。」
何故だか、自然と言葉が出せた。
言ってしまえば後はどうにでもなれ、
といった感じで
自分の予想以上に落ちついていた。
「ずっと――教室の窓から、
夜久くんを見てた……。」
皺になるほどスカートを握りしめて
半泣きの潤んでくる瞳で、必死に笑う。
「マジ、で……?」
もう一度そう私に尋ね、私はそれに強く頷くと
突然夜久くんは両手で顔を覆って
黙り込んでしまった。
「や、やっぱりダメだよねっ
ごめんね、こんな突然――!!」
また涙がポロポロと零れてくる。
もう…しつこい。私の涙。
貸してもらったタオルはもう既に濡れていて
顔に近づけると、彼の残り香が
微かに香った。
「ダメ……なんかじゃ、ねぇよ…」
――え…?