天使はワガママに決まってる
思わずロボット相手に
言葉を詰まらせてしまった。
エルは私の心理を知っているのかいないのか、
何も言わずにただ黙って
私の返事を待っている。
「まぁ行かなきゃ駄目なの。」
結局、そんな風に軽く流してしまった。
――本当は、義務教育中ということもあるが
親の世間に対する異常なまでの
関心のためだった。
有名な両親の娘が不登校ともなると、
世間での目が痛い。
つまりは、親のために行っているも同然で。
本当は――行きたくなんて、ない。
しかしエルは案の定、それには興味無さそうに
ふうん、と呟いただけだった。
それから暫くどちらも口を開かなくて
気まずい沈黙に包まれる。
……恐らくエルはそれを感じていないだろうが。
すると、背後にいたはずのエルが
また突然私の目の前に飛び出してきた。
「ねぇねぇせな!」
「何?」
私と身長のあまり変わらない彼は、
ニコニコと幸せそうな笑みを浮かべていて
一体何事かと、私は首を傾げる。
「僕も、学校行きたい!」
「え。」
あまりにも単純でいて、
それでいて何よりも難しい提案。
私は人間、エルはロボット。
「や……それは、ちょっと。」
無理だろう。
――と、普通に考えたが
エルのいる学校生活は、きっと
とても輝いて見えるんだろうな……
なんて
似合わない妄想をしてしまい、
結局私はうん、と首を縦に振ってしまったんだ。