天使はワガママに決まってる
「エルくんは瀬那ちゃんの従兄弟だから、
一応エルくんは、
瀬那ちゃんの隣の席に座ってね。」
「はーい。」
エルは、この学校では
私と従兄弟ということになっている。
先生にも誰にもエルが
ロボットだということは告げていないし
世間で騒ぎになるのも面倒くさいので、
このことは決して内緒だ。
今のところ、誰もエルがロボットだとは
疑いもしていないだろう。
そのためにこの3日間で、
エルには出来る限りの知識は教えた。
「いぇーい!せな、隣だねっ!」
「うん。」
エルが私の隣の席に座り、
パチンッとハイタッチを交わす。
その姿を見てか、教室中から
コソコソとした声が聞こえた。
「(えーっ?!エルくんがあの安曇さんの
従兄弟だ何て信じられない!)」
「(安曇さん暗いもんねー。
近寄りがたいっていうか。)」
内容はやっぱりというか。
誰もがそう思うのはあたりまえのように思えた。
エルにその会話は届いていないのか、
相変わらずニコニコとした表情のまま
ストンと大人しく椅子に座っている。
私への陰口はもう慣れたものなので、
私も聞こえていないフリをした。
「じゃあ、みんな1時間目の準備してー。」
そう言って先生が教室から出て行った後
エルの周りには男女問わず、
沢山のクラスメイトが集まってきた。
その姿を見て、先ほどのように
再び私の中に生まれた、ドロドロしたもの。
このとき私はこれが何なのか
よく分からなかったけれど、
きっとこれが
”嫉妬”というものだったのかもしれない。