天使はワガママに決まってる

心地よくそよいでいた風が突然強くなり、
その風に飛ばされた純白のカーテンが
窓辺の私の視界を覆った。


「……もう…っ!見えないじゃない!」


言っても無駄だと分かってはいるけど、
折角のチャンスを見逃したくは無い。

すると
私がカーテンと格闘している間に、
今まで眺めていたグラウンドから
高らかにホイッスルが響いた。


「あー…見損ねた…。」


思わずカーテンを悔しさで握りしめ、
私は口を尖らせる。

グラウンドで飛び跳ねる少年達。
ゴール内に転がるボールを見たところ、
どうやらうちの学校が勝利したようだった。


「…おめでと。」

私は小さく微笑んで、
その輪の中の一人に対して呟く。



”日和(ヒヨリ)って、影薄いよね”


そんなことを、
人生の中で何度言われてきたことか。

名前は晴れてるくせに、暗いとか
そんな風にいつもからかわれて。

自分でも分かってる。
暗くて、大人しくて、自己主張が弱い。


まるで、シロツメクサのような。

いや、まだそっちの方がマシかも。


それくらい、
私は全てにおいて平凡だった。

友達もそれなりにいて、成績も普通で。
目立つところもなくて、完全なる一般人。
彼氏なんて一度もいたこともない。


でも、そんな私が半年前。

初めて”恋”をしたんだ。

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