天使はワガママに決まってる
夕焼けが色あせ始めた日暮れ。
コンクリートの路面に、
二つ並んだ影が伸びる。
「……~で、速水くんたち
すっごく面白くてねっ!」
学校からの帰り道、隣で嬉しそうに
今日会ったことを私に話すエルは、
本当に嬉しそうでキラキラ輝いて見えて
私はただ適当に相槌をうつだけしかできない。
エルにあったことなど、
私は彼をずっと見ているのだから
完璧というまで把握しているのに。
そんなことも知らないエルは、
ぎこちない喋り方でそれでも必死に話すのだ。
「へぇ。」
「あっ。それからね。」
「?」
何かを思い出したかのように、
ハッと表情を変えたエルを
私は訝しげに見つめた。
「クラスのこが、「エルお前、安曇瀬那とよく仲良くいられるな。」って!」
「……!」
ニコニコと、よりいっそう
嬉しさを増したかのような表情に
私の胸はズキンと痛んだ。
クラスの奴らはきっと、
いい意味で言ったわけではないだろう。
けれどエルは、”仲がいい”という
単語だけに反応して、
その言葉の意味をちゃんと理解出来ていないのだ。
だからそんな”嫌味”ですら、
本当に嬉しそうに笑って――…
あまりにも純粋すぎる彼に
胸がもっと苦しくなった。
「だから僕、ありがとう。いいでしょ?
って言ったんだよ……瀬那?どうしたの?」
「何でもない。」
ふいに溢れた、”愛しい”という感情。
黙り込んだ私を覗く、
目の前の”ロボット”の存在が、
私の中でどんどん膨らんでいく。