天使はワガママに決まってる
「それに?」
「エル、今まで大好きだーっつってたじゃん。」
「それはそうだけど……」
”聞イチャ駄目ダ”
何かが違う。
この続きに不安しか感じられなくても
私の手が耳を塞ぐことはなくて
視線をエルから逸らすこともできなくて
ただただ、私は固まってた。
「瀬那はただの従兄弟だからさ。」
私は、絶句した。
いつもとは違う雰囲気を感じてて、
何かがいつもと違うって思っていたのに。
エルの口から出たのは、
家族、でもなかった。
(っ――…!!)
確かに、学校では従兄弟って
言うように教えてきた。
家族って言ったのは私だけれど、
急に兄弟が増えたら怪しいと考えて教えたことだった。
でも最初はロボット感があったエルだから、
純粋に家族だって、大好きだ――って
言ってたはずなのに。
最近急に人間らしくなってきて。
我侭も自己主張もするようになっていた。
従兄弟って設定だって教えたのは自分だけれど
”ただの”って――
初めは興味半分で作ったロボットに、
”恋”だなんて設計図
私にも、エルにもなくて
この想いが実ることが無いことは覚悟してた。
でも――
「エル。」
「あ、瀬那っ!そろそろ帰「今日は家に帰ってこなくていいから。」
「……え…?」
私を見つめる、切なげな瞳。
そんな悲しい顔をされても、
今の私は止まらない。
頭の中がゴチャゴチャで、何を言ってるのか分からない。
とうとう、何もかもが爆発してしまった。
「じゃあね。」
呆けた表情の男子とエルをその場に残したまま
私は教室を飛び出した。
後ろから”せなっ”って声が聞こえた気がして、
振り返っても、教室から出てこないエル。
また溢れ出しそうになった涙を、隠すように俯いて
私はただ我武者羅に廊下を駆け抜ける。
”恋人”じゃなくていいから
せめて
”家族”って言ってほしかった