天使はワガママに決まってる
暑い、夏の日のことだった。
大会間近の運動部がグラウンドで汗を流して
本当に楽しそうに練習してる姿。
今までなら別に気にもならなかったけれど、
その日はふいに見てみようかな、
なんて気になって、
教室の窓からグラウンドを覗いていた。
私たちの教室は2階で、
丁度サッカー部の練習スペースの真上。
何気なく頬杖をついて、
ほんとに何気なく見てた。
恋、というものは本当に
突然やってくるもので。
そのときたまたまシュートを決めた少年の、
輝く太陽のような笑顔を見て。
何故だか、その笑顔が忘れられなくなった。
『誰…なんだろ。あの子。』
自分でも驚くほど単純。
今までの引っ込み思案な私はどこへやら、
私は人づてに彼のことを調べた。
『サッカー部の?えーと、確か…』
『あぁ、夜くん!夜久くんでしょ?』
彼も、名前が似合わない子だった。
あんなにキラキラと笑うのに、
名前が夜久(ヨルヒサ)だなんて。
夜、なんてイメージが全くないのに。
そんな些細なことでさえ、
「似た者同士」。なんて私は喜んだ。
可笑しな恋の始まり。
それはあまりにも突然で、
実は私が自分で思う以上に
私は彼――夜久くんに恋をしていたんだ。